きずきのきづき

建築の気付き

コンビニを第1種低層住居専用地域に併用住宅でなくても建築可能にするそうだ。

少々驚いた。

第1種低層住居専用地域(以下、1種低層)にコンビニを建てれるようにするそうだ。しかも、併用住宅ではなく、単独店舗としてだそうだ。 

元の記事は削除されてしまっていてもう読めないが、要約すると「近所に商店がなく日々の買い物が困難な高齢者などの「買い物弱者」対策」だと書いてある。確かに必要なのかもしれないと思うのだけれど、何か腑に落ちない。いうまでもなく、1種低層に住む人は高齢者だけではない。若い人だって住んでいる。

 

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買い物弱者が高齢者だと言うのはわかる。歩くのは困難だろうし、乳母車では一度に運べる荷物の量も限られてくる。しかし、そのような高齢者は「コンビニ」を求めているのだろうか。

 

1種低層の建築制限

1種低層と言えば、一番厳しい用途地域が定めれれている地域だ。建築基準法別表第二(い)項と建築基準法施工令第一三〇条の三~五では、第一種低層住居専用地域内に建築することが「できる」建築物が示されている。

別表第二では(い)項:一種低層、(ろ)項:二種低層、それと(は)項:一種中高層では建築することが「できる」建築物が明記されている。それ以下では、建築「してはならない」建築物と表現されている。これからも、上位3項には、厳しい建築制限がかけられていることがわかる。

つまり、上位3項では、例に挙げた建物をたててもよいですが、それ以外は駄目ですよ。それに対し、それ以外の項では、例に挙げた建物は駄目ですが、それ以外はいいですよ。と言っています。上位3項は厳しく、それ以外は緩いと言えます。

 

住環境を守るために、建築基準法で用途地域が厳しく定められています。しかし、全く商業施設を設けてはいけないわけではありません。住環境を守るというと、住宅しかないと思われがちですが、そんなことはないのです。

兼用住宅で、非住宅部分の床面積が、50平米以下かつ建築物の延べ面積の1/2未満のもの

非住宅部分における用途制限があり、下記のものに限られる。

  • 事務所(法令で指定する汚物運搬用・危険物運搬用等の自動車のための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く。)
  • 日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店
  • 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋等
  • 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店等(原動機設備は出力総計が0.75kW以下)
  • 自家販売のために食品製造業(食品加工業を含む)を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等(原動機設備は出力総計が0.75kW以下)
  • 学習塾、華道教室、囲碁教室等
  • 美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ又は工房(原動機設備は出力総計が0.75kW以下)

第一種低層住居専用地域 - Wikipedia

 と、制限こそされていますが、住宅しか駄目だとは定めていないのです。

「住居と併用している小規模な店舗で、かつ、生活に必要なものであれば、第1種低層住居専用地域で商売してもいいですよ。」

と言っています。

 

予想される建築トラブルと対応

コンビニが1種低層に建てられることへの不満として思いつくことを挙げてみると、

1、深夜の光がまぶしい。

2、騒音で眠れない。

3、客が騒ぐ。若者が集まる事への不安。

4、交通量の増加して危ない。

5、知らない人が地域に入ってくる。

6、オーナー不在の商業施設の管理。

 

上記の例でいくと、1~3は深夜営業をやめてしまえばいい。もともと静かな住宅街に、そんな夜中なんて人が来ないでしょう。もし、深夜に行きたいなら遠くのコンビニまで行けばいい。深夜はやっていないと思えば、買いだめもするだろうし、そもそも、それまでなくてもやって行けだのだからできるはずだ。便利だからといって甘えていては、人間は退化してしまうものだ。

4・5は問題なのかもしれない。店をやるからには営利が目的であるから繁盛しなくてはいけない。田舎では、近場でも車で移動するし、さらには、搬入業者が1日に3回ほどは来る。今まで車が通らなかった道を車が通ることになるだろうし、時間帯だって関係ない。これは、コンビニ側としても歩み寄りが難しいのではないか。

私の場合、一番嫌なのが6のオーナー不在です。住宅地で手入れが行き届いた地域に、不特定多数の人が行き来する商店ができるのは嫌だ。近所の駄菓子屋だったり、クリーニング屋程度であれば許せるのだけど、コンビニと言うとそうはいかない。誰が管理しているのかわからない建物が後からできるのは嫌なものだ。1種住居の繋がりはないだろう。オーナーがゴミ捨てや近隣の掃除に参加するのだろうか。

 

といったところでしょうか。上記の心配がないから、一種低層を選んだと言う人もいるだろう。

 

これは、私の主観ですが、一種低層では、外壁後退などの制限が追加されていて、街並みに余裕を感じるし、住んでいる人にも同じようなイメージを持っている。低層のアパートが建っているけど、管理人の手入れが行き届いていることが多いと思う。

そこにコンビニができるとなると、反対が起こるだろうと予想できる。ただし、コンビニ側が、対策をとることである程度は、歩み寄りができるのではないだろうか。

 

 

さいごに

今回、買い物弱者の為だと言っているけど、それは本当に弱者のためなのだろうか。利便性と天秤にかけた場合、少なくとも、私が住む岐阜のような田舎では必要ないと感じている。コンビニ側としてもそんなところに建てて儲かるのだろうか。住民の反対が予想されるが、お互いの妥協点を見つけて建てることにあまりメリットを感じない。以前、コンビニ建設に携わったことがあるが、土地選びについてはポリシーがあって、どれだけでも、土地情報が集まるのだけれど、あれが駄目これが駄目と言ってはじかれていった。建てたとしても、オーナーが見つからずにすぐに解体されるコンビニも見た。

 

イートインスタイルにしてお年寄りのたまり場になるかもしれない。どうなるかはわからないが、コンビニ業界のはフットワークがいいイメージがある。一種低層にコンビニを建てることで、今までとは違う何かを売ろうとしているのかもしれない。今後の動きを注目したいと思う。

 

もしかしたら、三河屋さんみたいになろうとしているのかもしれないね。だったら、既存の商店こそ頑張って欲しいものだけど、今まで小規模店舗を併用住宅でやっていた人たちが、コンビニに乗り換えるかもしれないね。そしたら、コンビニは儲かるかもしれないけど、それは、物を売って儲けるのとはちょっと違うよね。そのうち、近所の〇〇屋さんが、家取り壊してコンビニやるらしいよ。って噂が聞こえてくるかもね。そのあと、コンビニが駄目になって、土地を売り出して、、、。って、コンビニが不動産屋になったりしてね。

 

1種低層にコンビニを建ててよいとなると、保育所のように、どこにでも建ててよいことになるのだろう。1種低層の街に現状イメージするコンビニが必要なのだろうか。今後も注目していこうと思う。